東京駅から皇居へと続く行幸通りのイチョウ並木から今回もお届します。

この日はすっきりと晴れというわけではなく、晴れてはいるものの雲が多い天気でした。
そんな空には色づいたイチョウの葉がよく似合う!
いい景色を求め上を見上げて歩いてたら、見つけちゃいました。イチョウの実。
ここに撮影に行った11/20の記事は
宮沢賢治の「いちょうの実」でした。この絵本にすることは朝から考え、すでに記事を作っていたので、それが頭の中を巡っていて、話を頭に浮かべてイチョウの実を眺めてみました。
本文はすべて宮沢賢治「いちょうの実」からの引用です。

「僕なんか落ちる途中で眼がまわらないだろうか。」
「よく目をつぶって行けばいいさ。」

「ね、あたしどんな所へ行くのかしら。」
「あたしだってわからないわ、どこへも行きたくないわね。」
「あたしどんなめにあってもいいからお母さん所に居たいわ。」
「だっていけないんですって。風が毎日そう云ったわ。」

「そしてあたしたちもみんなばらばらにわかれてしまうんでしょう。」
「ええ、そうよ。もうあたしなんにもいらないわ。」
「あたしもよ。今までいろいろわが儘ばっかし云って許して下さいね。」
「あら、あたしこそ。あたしこそだわ。許して頂戴。」

「そら、もう明るくなったぞ。嬉しいなあ。僕はきっと黄金色のお星さまになるんだよ。」
「僕もなるよ。きっとここから落ちればすぐ北風が空へ連れてって呉れるだろうね。」

「僕は北風じゃないと思うんだよ。北風は親切じゃないんだよ。僕はきっと烏さんだろうと思うね。」
「そうだ。きっと烏さんだ。烏さんは偉いんだよ。ここから遠くてまるで見えなくなるまで一息に飛んで行くんだからね。頼んだら僕ら二人位きっと一遍に青ぞら迄連れて行って呉れるぜ。」
「頼んで見ようか。早く来るといいな。」

「僕は一番はじめに杏の王様のお城をたずねるよ。そしてお姫様をさらって行ったばけ物を退治するんだ。そんなばけ物がきっとどこかにあるね。」
「うん。あるだろう。けれどもあぶないじゃないか。ばけ物は大きいんだよ。僕たちなんか鼻でふっと吹き飛ばされちまうよ。」

「僕、靴が小さいや。面倒くさい。はだしで行こう。」
「そんなら僕のと替えよう。僕のは少し大きいんだよ。」
「替えよう。あ、丁度いいぜ。ありがとう。」
「わたし困ってしまうわ、おっかさんに貰った新しい外套が見えないんですもの。」
「早くおさがしなさいよ。どの枝に置いたの。」
「忘れてしまったわ。」

「そら、ね。いいぱんだろう。ほし葡萄が一寸顔を出してるだろう。早くかばんへ入れ給え。もうお日さまがお出ましになるよ。」
「ありがとう。じゃ貰うよ。ありがとう。一諸に行こうね。」
「困ったわ、わたし、どうしてもないわ。ほんとうにわたしどうしましょう。」
「わたしと二人で行きましょうよ。わたしのを時々貸してあげるわ。凍えたら一諸に死にましょうよ。」

突然光の束が黄金の矢のように一度に飛んで来ました。子供らはまるで飛びあがる位輝やきました。
北から氷のように冷たい透きとおった風がゴーッと吹いて来ました。
「さよなら、おっかさん。」「さよなら、おっかさん。」子供らはみんな一度に雨のように枝から飛び下りました。

北風が笑って、
「今年もこれでまずさよならさよならって云うわけだ。」と云いながらつめたいガラスのマントをひらめかして向うへ行ってしまいました。
お日様は燃える宝石のように東の空にかかり、あらんかぎりのかがやきを悲しむ母親の木と旅に出た子供らとに投げておやりなさいました。
ほんとに、いちょう並木でこんな会話が聞こえてきそうですよね。
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